どのチームにも、素行が悪かったり、練習態度が良くなかったりする「問題児」と呼ばれる選手がいることがあります。しかし、そうした選手の中には大きな可能性を秘めていることも少なくありません。指導者が彼らの可能性を信じ、適切に関わることで、チームにとって欠かせない存在へと成長することもあります。ここでは、「問題児」を活躍選手へと変える指導のポイントを紹介します。
1. 「問題児」の背景を理解する
まず重要なのは、その選手がなぜ問題行動を起こすのかを理解することです。
(1) なぜ問題行動を起こすのか?
選手の問題行動には必ず理由があります。以下のような背景が考えられます。
- 承認欲求:「自分をもっと見てほしい」「評価されたい」という気持ちが表れた結果
- 劣等感:「自分はチームの中で価値がない」と感じ、やる気を失っている
- 家庭環境:家の事情でストレスを抱え、サッカーに集中できない
- 自己表現の方法が分からない:感情をコントロールする術を学んでいない
問題行動を表面的に捉えず、根本的な原因を探ることで、その選手に合った指導が可能になります。
(2) コミュニケーションを増やす
「問題児」とされる選手ほど、指導者が意識的にコミュニケーションを取ることが大切です。
- 日常の会話を増やす:「最近どうだ?」と気軽に話しかける
- 強みを伝える:「お前の○○なプレーはチームの武器だよ」とポジティブなフィードバックをする
- 否定しない:「お前はダメだ」ではなく、「どうすれば良くなるか」を一緒に考える
特に、指導者が「自分に関心を持ってくれている」と感じるだけで、選手の意識は変わることがあります。
2. 強みを見つけ、伸ばす
「問題児」とされる選手の中には、特定の能力が突出していることが多いです。その強みを見つけ、伸ばしていくことが活躍につながります。
(1) 役割を与えて責任感を持たせる
- フィジカルが強い選手なら? →「お前の守備は頼りになる」とディフェンスリーダーに
- 気が強い選手なら? →「チームを鼓舞してほしい」とムードメーカー役を任せる
- 技術がある選手なら? →「チームの攻撃を引っ張れ」と自由を与える
責任を与えることで、自分の存在価値を感じ、チームに貢献しようという意識が芽生えます。
(2) 小さな成功体験を積ませる
「お前はできる」と言葉で伝えるだけでなく、「本当にできる」という実感を持たせることが大切です。
- 成功体験の例
- 練習試合での良いプレーを全体の前で褒める
- 1対1の強さを活かし、特定の場面での起用を増やす
- 個別練習で「やればできる」という手応えを感じさせる
小さな成功が積み重なると、選手は「もっとやれるかもしれない」と前向きになり、行動が変わっていきます。
3. 指導者の姿勢を変える
問題児を変えるためには、指導者自身の接し方を見直すことも重要です。
(1) 選手の可能性を信じる
指導者が「こいつはダメだ」と思っていると、選手は敏感にそれを感じ取り、ますます反発します。逆に、指導者が「お前には可能性がある」と本気で信じると、選手の意識は変わります。
- NG例:「どうせまた問題を起こすんだろ?」(決めつけ)
- OK例:「お前ならもっとできる。信じてるぞ」(期待を込めた言葉)
(2) 厳しさと愛情のバランスを取る
甘やかすのではなく、厳しさの中にも愛情を持つことが大切です。
- ダメなことはダメと伝える:「チームのルールは守らないといけない」
- でも見捨てない:「ミスしても、俺はお前を信じている」
選手が「自分は見放されていない」と感じることで、態度が変わることもあります。
(3) 長期的な視点を持つ
「問題児」を一朝一夕で変えることはできません。長い目で見て、その成長を見守る姿勢が大切です。
- すぐに結果を求めず、少しずつ変化を促す
- 成長の兆しを見せたら、それをしっかり認める
- 一度問題を起こしても、根気強く向き合う
4. チーム全体の環境を整える
チーム全体の雰囲気が「お互いを認め合う文化」になれば、問題児も自然と馴染んでいきます。
(1) ポジティブな文化を作る
- 「良いプレーを称え合う」チームにする
- 失敗を責めるのではなく、「次にどうするか?」を考えさせる
- チームメイト同士で励まし合う環境を作る
(2) 問題児を孤立させない
- 「あいつは問題児」とレッテルを貼るのではなく、チーム全体で成長を促す
- リーダー格の選手に「お前が導いてやれ」と役割を与える
まとめ
「問題児」と呼ばれる選手も、適切な指導をすれば活躍する可能性を秘めています。そのためには、以下のステップが重要です。
- 選手の背景を理解し、コミュニケーションを増やす
- 強みを見つけて伸ばし、成功体験を積ませる
- 指導者自身が可能性を信じ、厳しさと愛情のバランスを取る
- チーム全体の雰囲気を整え、ポジティブな環境を作る
「問題児」として見放すのではなく、「可能性を秘めた選手」として向き合うことが、彼らの成長を促す鍵になります。指導者の関わり方一つで、チームの戦力になり、将来のリーダーへと変わる可能性もあるのです。
コメント